ボナブロ

アメリカ人夫・2人の息子と大阪在住。限られた人生、やりたいと思ったことはやれる範囲で挑戦していくボナーラの記録です。

【タイ映画バッド・ジーニアス】不正ビジネスに手を染めた女子高生の運命

「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。

恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。」

 出典: 東京大学

 

これは今年話題になった東大の上野千鶴子教授が新入生に送った謝辞の一部
私が特にお気に入りの一節です。

 

予告編で気になったタイ映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」

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出典: 

https://maxam.jp/badgenius/_/img/header-img.jpg


とにかく演出が終始かっこよく、魅力的なキャスト、スリル感や社会への皮肉、それでいて甘酸っぱい青春風味も感じられる素晴らしい映画でした。

 

見終わってふと思い出したのは、冒頭の上野教授の一節でした。

 

 

あらすじ


主人公のリンは天才的な頭脳を持ち、スポーツ万能、ピアノも得意。
しかし父子家庭で貧乏。
優れた成績から奨学生として高校に入学。
入学初日に友達になった女優志望のグレースは勉強ができない。
テストで合格点を取らないと演劇部の発表に出れないと嘆くグレースに、こっそりテストの回答を教えるリン。
見事合格点を取ったグレースは、その事を彼氏で金持ちのパッドに話し、パッドはリンに”カンニングビジネス”持ちかける・・・

 

題材になった実際の事件


劇中、テストを受ける教室に入る前に生徒がボディチェックを受けるシーンがあって、
「さすがにここまで厳重じゃないだろ(笑)」
なんて思ってました。

 

しかし後から調べると「バッド・ジーニアス」は中国で実際にあった事件からインスパイアされたそうです。

 

2014年中国で行われたアメリカ大学適正試験で不正が発覚。
試験結果が無効になりました。

 

中国では試験の不正が横行しているらしく、対策として試験場に監視カメラや監視ドローン(!)を導入したり、試験中無線信号が発信されていないか常時チェックしたりしているそうです。
無線信号は、消しゴムやベルト型の発信機(!!)で外部に試験内容を漏らした事案があったため。


そのため女子生徒はワイヤー入りのブラジャー着用禁止だそうです。

ドローンは気が散りそうだし、ブラもあかんし、真面目に受けている学生が不憫すぎる。

 

こうした不正の背景には、ペーパーテスト1枚がその後の人生を左右すること、中国人が適正試験を「勝つか負けるかのゲーム」と捉えていることがあるようです。

参考: 

https://www.sankei.com/west/news/150114/wst1501140002-n2.html


劇中でも、リンがビジネスを始める決定打となるのは、自分の通う名門高校で入学金という名の賄賂があることを知ったこと。
教育機関ですら行われる不正に対して憤りを感じ、うまくやったもん勝ちの社会で勝ち組になろうとします。

 

魅力的なキャスト


映画では同級生の4人がメインになります。

 

リン

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出典: https://maxam.jp/badgenius/_/img/cast-chutimon.jpg

 

まず主人公リンを演じる女優が、いい!!
演じるのはモデル/女優チュティモン チュンチャルーンスクイン (長いw)


とにかくスタイルがよくて、どこから足生えとんねん系です。
あと横顔がとても美しく、監督もそれを知ってか、キーになるシーンではリンの横顔がクローズされていたと思います。
リンは勉強はもちろん、地頭もいいタイプで様々な場面でひらめきや臨機応変さを見せ、カンニングビジネスは数十人にも顧客が増えます。
それを違和感なく演じるというより、あぁこの子なら任せて大丈夫だな。という謎の説得感を持たせてくれます。

 

グレース

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出典: https://maxam.jp/badgenius/_/img/cast-eisaya.jpg


リンの友達、グレースはまぁとにかくかわいい。
美人で愛らしい、笑うと周りにぱぁっと華が咲くような女性。


それでいて、彼氏は大金持ちの息子で、高校生なのに彼氏の家のプールでシャンパンあけてワッショイしているんですが、それを感じさせないというか、そういうところがあっても純真、無邪気な雰囲気があります。
リンもグレースを助けたことが、「ビジネス」のきっかけになるんですよね・・・。

 

パッド

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出典: 

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グレースの彼氏で金持ち、リンに「金を払うからカンニングさせてほしい」と持ち掛けます。
成績を上げたい理由は、「パパに新車を買ってもらえるから」
絵に描いたようなボンボンですね。
まぁ遠目で見るとただのイヤなやつなのですが、面白くて、生まれついての金持ちならではの品もあり、人脈があるのもうなづけます。

 

バンク

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出典: https://maxam.jp/badgenius/_/img/cast-chanon.jpg


リンと同じ奨学生で、秀才だが家が貧乏。
なんでもソツなくこなすリンに対して、少々不器用なところがあり、そこがリンに倫理観や人間らしさを考えるきっかけを与えます。
バンクは若い時の嵐の二宮くんに似てて、劇中ずっと「ニノだぁ。」と思ってました。
(昔、好きだったんです笑)

 

最後に


私がタイ映画を見たのは2度目。
初めて見たのは「アタック・ナンバーハーフ」というオカマのバレーチームが奮闘する映画(こちらも実話が題材)でした。

 

見たのはかなり前なのですが、吹き出すぐらいおもしろかった記憶。
吹替えで見るのがオススメです。

 

唯一タイ人の名前が本当覚えられなくて、誰だっけ?となりましたね。
その点、バッドジーニアスはリンやグレースなど覚えやすいし、主要キャストは4人で助かりました(笑)
時に笑えるシーンもあって、監督のセンスが光っています。

 

そして映像がとにかくかっこいい!


リンが編み出すカンニングの暗号やアイデアも本当にゲームのようで、シンプルだけど斬新なのです。
そこにリンの弾くピアノや、バンクが試験前に聞くクラシックがBGMとして加わり、まるで何かのCMのようなカンニングシーン

 

そしてハラハラドキドキ要素も多く、けっこう心臓に悪い系でもあります。
前にブログでハリウッド映画「クワイエット・プレイス」に触れたのですが、あれに匹敵する緊張感もありました。

 

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金持ちは一般人より誘惑が多いと聞きます。
下心ある悪者が何とか恩恵にあやかろうと、すり寄ってくるのです。

 

劇中では、悪意の有無はさておき、金持ちのパッドとグレースが、貧乏なリンの才を金で利用します。
秀でた能力を持つ人は、その能力の恩恵を受ける一方、能力を管理する責任感が問われます。

 

確かにカンニングはいけないこと。
しかしリンの気持ちも正直分からんでもないんですよ。

学校ですら賄賂が横行し、もっともらしい事を言いながら私腹を肥やす校長。
努力せず金を積んで名門高校に入学する同級生。


そんな世界の中、自分の能力で金を稼ぐことはいけないことなのか?
社会システムが腐っている以上、うまく振舞った者が成功を手にするのではないか?


若く頭脳明晰なリンの葛藤は、私たちが社会でどう生きるかを投げかけてくれます。

斬新でかっこよく小気味いいタイ映画「バッド・ジーニアス」おすすめです!!

 

 

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